三方よしと国際ビジネス
全ての会社に、社是・社訓というものがあります。
私の考えでは、社是は会社の哲学や方針を社内外のステークホルダーに差し示すもの。そして、社訓は、会社風土とあいまって、社員に浸透してゆくスピリッツのようなもの。そのように認識しています。
12年前、貿易会社を立ち上げた時、私が決めた我が社の社訓は、「商社魂」でした。
とても曖昧でかつ、観念的な言葉ですが、社訓がスピリッツであるのなら、それで十分。あとは社員一同が日々の活動の中で規範とすべく各自の内部に醸成してゆけばいいことなのです。
「商社魂」
私どものその言葉には様々なイメージが内包されているのですが、その中の一番大切なイメージとして、日本の商社の遠い先祖である、近江商人の哲学、その一番重要なものである『三方よし』という考え方があります。
『三方よし』の三方とは、
1方:売り手(すなわち自分)
2方:買い手(すなわちお客様)
3方:世間(すなわち社会)
この3つがすべてよしとなることが、近江商人が言うところの正しい商行為(商取引)であるということです。売り手よしとは、当然ながら売り手が利益を得られることでしょう。買い手よしとは、今風にいえば顧客満足であり、世間よしとは、社会貢献である、すなわち、三方よしとは、売り手が顧客を満足させ、さらにその商取引が社会的価値をもつものであるとき、売り手は利益を得ることができるということを表しています。この考え方が、伊藤忠兵衛(伊藤忠初代)が言う『利真於勤』につながってゆくのだと言えます。
この『三方よし』は現在においても十分手本になる商道徳であるとは、よく言われていることです。 すなわちそれは、「商社(=商人)とは、その顧客との商行為(商取引)によって(新たな社会的価値の創出を含めた)社会貢献を行う者でなくてはならない。」と言う言葉に置き換えられます。
言葉は簡単です。でも、ではどうやってそれを具現化してゆくのか? とても難しいと思います。でもそこには、特に私どものような貿易会社が国際社会の中で居場所を見つけて行くためのとても大きなヒントがあると考えています。
近江商人は天秤棒を担いで諸藩を行商しました。各地で商いをする相手、買手の向こうには世間がありました。現在私どもはクライアント様の様々なシーズを世界市場につなげていこうと考えています。また、現在は、“世間”というものが地域社会を飛び越えてグローバルに一体化している部分も大きいです。時代が変わり、”世間“と言うものが空間的にも大きく変わりましたが、売り手の本質、買い手の本質とあいまって、商売の本質、商人(商社)のありようは、今も昔も何ら変わらないのだと思います。
それゆえ、『三方よし』は国際社会でも通用する概念であるといえます。
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