抗がん剤についての覚書②~抗がん剤の中止

すい臓がんのこと

前回の関連記事(抗がん剤についての覚書)を書いた時点(8月初旬)では、入院して第1クール目の抗がん剤をはじめ、予定では3週連続で毎週金曜日に抗がん剤を点滴した後、1週間休みという、1か月/クールで回してゆく予定でしたが、第1クールの第3回目の投与の予定の日に、炎症反応(CRP)が極端に上がったため、中止になった、というところまで書きました。

その後、先週までの状況は、第1クールが2回で終わった後1週間休んで、第2クールが始まったのですが、1回目の投与後、38度越えの発熱が続き、2回目の投与の日、CRPがやはりかなり上がっていたので、投与見送りになりました。そして、その次の週、第3クールの第1回目の投与がなされました。その日の検査で、癌マーカーCA19-9が、1000程度から300程度にまで落ちており、抗がん剤が効いているようでした。そして炎症反応と、微熱が続いていることの理由を探るためにCT検査をしました。そして、2週間前、第2回目の投与の時、その炎症反応と微熱の原因が、盲腸を併発しているためであることが分かりました。同時に、癌マーカーが130程度とかなり落ちており、主治医の意見は、「抗がん剤自体はある一定の効果を示しているから、今盲腸の手術をするのはもったいないから薬で散らしながら抗がん剤を進めてゆきましょう」ということで、3クール目2回目の抗がん剤投与がなされました。しかし、その投与後の、先週1週間、薬の副作用が大変大きく、私は今までない耐え難いしんどさを経験しました。

金曜日投与の直後から微熱があり、一時39℃近くまで上がりました。その後、 ナイキ酸の投与で、火曜日には熱は引きましたが、体のだるさというか、苦しさで、ベッドから起き上がれない状況でした。異様に脱力して、ベッドのふちに座るのもやっとの思いでした。おまけに、7月中旬に抗がん剤を投与し始めたころから激しい下痢に悩まされていましたが、下痢を止めるためいろんな薬剤を試しましたが一向に改善されず、先週はその下痢のために夜もおちおち寝てられないような状況になってしまいました。それと夜に定期的に襲ってくる吐き気。結局先週は、木曜日になってやっと体が落ち着きはじめ、会社にもその午後に、無理をして出社できました。

抗がん剤を打ち続ける限り、この苦しさは続き、回を重ねるごとにしんどさは増してくるという風に聞いています。そして、病院の方針は、抗がん剤はずっと打ち続けるということでした。(私が死ぬまで?)さらに私の場合、抗がん剤を打っても、延命できるのは1年程度だろうというようにも言われています。

私はシンプルにこう考えました。このままの苦しさでベッドからも降りられず、死ぬまでの1年間を過ごすのか? そのように、QOLを落としたままだらだらと生きながらえるのが延命といえるのか? それよりも、抗がん剤をやめて、たとえ短くともQOLを維持したまま活動ができる方がいいのでは? これまで抗がん剤を投与したおかげで癌マーカーが極端に落ちてきているということは、現時点で、すでにすくなくともあと数カ月は生きながらえるということではないだろうか?(治療前の5月には余命数カ月といわれていたから既にそれよりも生き長らえた。)抗がん剤をやめたら今抗がん剤で完璧に抑えられているわき腹と背中の激痛は戻ってくるかもしれないが、多分下痢も解消され(そのためには場合によっては盲腸の手術をしなければならないかもしれないが)、抗がん剤が抜けるとだるさやしんどさもかなり軽減されるに違いない。

前回の記事に書いたように、私はもともと抗がん剤治療をするつもりはありませんでした。(この辺のことは自分の人生観にもかかわることなので改めて書いてみたいと思っていますが。)

QOLを下げてベッドで過ごすよりも、延命よりも、死ぬ直前まで仕事をしていたい。そう思っていました。

そして今、私には具体的にQOLを下げてられない事情があります。それは、私は今一度オランダに行かねばならないということです。

癌だと診断された昨年の12月から、今まで十分に時間があったおかげで、事業の承継については随分と段取りが立ちました。会社の承継者の目途もついて今は彼に教育を施している時間的余裕もできました。台湾の子会社も筋道が立って、現地のパートナーも私の意思を十分理解してくれています。あとひとつ残っているのがオランダの子会社のことです。オランダに支店を作って進出したのは5年前でした。その後、現地の公的支援を受けるため法人化した(会社にした)のですが、もともと営業拠点ではなく情報発信基地であるこの会社をどう承継してゆくのか?これだけが今私に残された課題になっています。この件で今オランダの様々なところと話しているのですが、この結論をつけるため、11月中旬に(ドイツでのバイオメディカルの一大イベントへの参加のタイミングで)オランダ現地に行きたい。そして私が始めた事業なのだから自分の責任で結論に至らせたい。

そう思っているのです。おちおちベッドの上で苦しんでいるわけにはいかないのです。航空チケットと宿泊ホテルの予約もすでに終わっています。

そんなわけで、先週金曜日に、主治医に、抗がん剤治療の中止を訴えました。「もうやめたい」という訴えです。先生との話し合いの結果、以下の結論に至りました。

  • とりあえず2週間抗がん剤を休むこと
  • 盲腸については主治医が手術について外科と相談する
  • 抗がん剤は、癌を叩くという目的は捨てて、今実際効果がでている腹部および背中の激痛のコントロールという意味で、1回投与して2週間休みとか、そういうスパンで継続してゆくこと

現時点ではそういうことになりました。これから先またいろいろと状況が変わっていくのだろうという覚悟はしていますが、今日月曜日、先週1回抗がん剤を抜いただけで体調はすごく復活してきています。いまさらながら抗がん剤の強さについて思い知りました。