経営者の資質①~夢を持つ

すい臓がんのこと, 商社の本懐

私は昨年すい臓がんと診断され、今年の5月には余命宣告を受けました。このまま放置すると余命は数か月、抗がん剤治療をしてうまくいけば1年程度延命できるだろうといわれました。7月から抗がん剤治療を始めています。

そんな状況下で、今、私は、私の死後の事業の承継ということについて、関係者と話し合っています。事業の承継とは現業の具体的なメソッドの引継ぎとは全く違った意味合いを持っています。それは今まで事業にかかわってきて、この会社のノウハウを知っているものに引継ぎをすればよいといったような単純なことではありません。特に中小企業の場合はそうです。
中小企業の事業承継とは、畢竟その企業の強みであるべき、経営者のスピリッツ(精神)の承継というものが非常に大きな意味を持っていると考えています。
そして、経営を引き継ぐものには、経営者としての資質というものがなければいけません。5年、10年、そして100年続く企業であるためには、創業のスピリッツというものをきっちっと引き継いでゆくべきだと考えています。そして何よりも、経営者には経営者の資質というものが備わっていなければなりません。

そこで、私は経営者の資質というものについて考えてみました。つまり経営者にとって一番大切なものは何かという命題なんですが・・・
今後何回かに分けて、その経営者の資質について私が考えていることを言葉として残してゆこうと思いました。


それでは経営者にとって一番大切な資質とは何か。答えは簡単だとすぐ気付きました。
それは
「夢があること、そしてその夢を実現したいと強く願うこと。」
たったそれだけの事だと思いました。
でもそれは意外に簡単な事でもない事に直ぐに気付きました。
そもそもあなたには夢がありますか?
って事。
夢を実現するにはそもそも「夢」がなくてはなりません。それはマーケティングで言うところのフィージビリティでもないので、実現可能なこじんまりとした夢などくそくらえです。そんなお勉強的な考え方の問題でもありません。その「夢」は突拍子もなく、馬鹿でかい何かであります。
そしてそれを「実現したいと強く願う事 」はもっと難しい事でしょう。それは、実現のための道程が余りに遠くて心が折れると言う事よりも、自分が思いついた「夢」があまりに突拍子もなさすぎて自分自身、時々馬鹿馬鹿しくなるといった類の難しさかも知れません。
でもその夢を10年持ち続けることができたなら、そしてそれを実現するんだと思い続けたら・・・
その10年間会社は存続し、10年分だけその「夢」に近づく。
経営なんてそんな生易しいもんじゃないだろう!
と怒られそうですね。
勿論実務のための知識は必要です。センスも大切でしょう。でも素質はもっと大事です。
そもそも「夢」のない経営なんて、イバラの道です。苦しいだけでなんの魅力もありません。

私の会社を承継するものは、まずは夢を持ってください。そしてそれを実現するための道をあれこれと模索してください。私の夢を承継する必要はありません。そもそも私の夢は私自身が生きて、自分の事業プランの中で実現すべきはずのものでした。それが残念なことに自分の死によって実現できなくなることは、私自身の不徳であり、私自身が忸怩たる思いで諦めるべきことです。
次の経営者は、自分自身の大きな夢を掲げ、そしてその夢を持ち続けそして実現に向かって邁進してください。その次の経営者もしかるべきです。そして、ゴーイングコンサーンとして、私が始めた会社がずっと続いてゆくこと。それが私の希望です。

そういうことを私は承継予定者に話しました。でももちろん、私は自分の人生をあきらめたわけではありません。余命宣告などくそくらえだと思っています。私は、生ある限り最後までいろんな画策し、そして 自分の夢を実現させようと考えています。